犬を撫でていると、飼い主にお腹を見せることがあります。
犬が仰向けになって飼い主にお腹を見せるのは、リラックスしていたり甘えたりしている時です。こちらでは、犬がお腹を見せる理由についてご紹介します。ポーズや行動から分かる犬の気持ちもチェックしましょう。
犬がお腹を見せる理由を解説
犬は言葉を発することはありませんが、しっぽを振ったりお腹を見せたりと、行動で飼い主に気持ちを伝えることがあります。仰向けになってお腹を見せるという犬の行動は一般的には飼い主への服従心のイメージがありますが、実は服従心以外にも様々な理由や意味を持っています。こちらでは、犬がお腹を見せる理由やお腹を見せるようになるしつけの仕方をご紹介していきます。
野性ではあまり仰向けにならない
犬は人間のペットとして暮らすために長い間改良されてきたので、祖先である狼の性質から大きく変化してきていますが、狼の頃と同様な部分もあります。太い血管が通る首、皮膚が薄く傷つけられたら内臓を損傷しやすいお腹、動物がエサを取りに行くのに大切な手足は犬の急所なので、狼時代の名残で人や動物に急所を触らせたり見せたりすることはほとんどありません。
本来、犬が仰向けになって自分の急所であるお腹を見せることは珍しいことですが、愛玩犬として改良された犬は飼い主との信頼関係を築いたり、仰向けのしつけをされたりすることでお腹を見せる行動に出やすいようです。反対に野生の犬は自分の弱みを周囲に晒さないようにしているので、お腹を見せるという行動に出ることはほとんどありません。
犬がお腹を見せる理由
犬が仰向けになって飼い主にお腹を見せる行動には様々な理由があります。こちらでは、犬がお腹を見せるのはどんな場面で多いか、どんな理由なのかをご紹介していきます。一般的なイメージである飼い主への甘えや服従以外の理由についてもチェックしていきましょう。
飼い主に甘えたい
犬が飼い主のそばにやって来て、仰向けになってお腹を見せるのは、飼い主への信頼や甘えたいという理由からです。身体を撫でている途中に、お腹を見せることもあります。自分の急所であるお腹を見せるのは犬と飼い主の信頼関係が上手に築けているという証拠と言えるでしょう。
また、コーギーやダックスフンドなど胴長短足体型の犬種は自分の手足で上手にお腹を掻くことが出来ないので、飼い主に甘えて痒い所を撫でてもらおうとしている場合もあります。犬がしっぽを振ったり、目をしっかりと開いて耳を飼い主の方に向けて立てている場合は、飼い主に甘えられるとウキウキしているサインでもあります。
犬がお腹を見せる時はすぐに撫でてあげたくなりますが、犬の要求にすぐに応えるとわがままになったり飼い主への服従心が揺らぐ可能性があります。「お座り」「伏せ」「お手」など飼い主の要求に応えさせた後に、「ゴロン」と命令してお腹を撫でてあげると飼い主の威厳が保たれます。
また、お腹を撫でる際に甘えて飼い主の手を甘噛みすることがあります。犬にとっては甘えるつもりのアクションですが、噛み癖が付きやすくなるので噛んだら撫でるのをやめてきちんとしつけましょう。
体温調節をしたい
体温調節が理由で仰向けになってお腹を見せる犬もいます。犬は人間のように汗腺がないため、汗をかいて体温調節をすることが出来ません。被毛の厚い犬種は夏の紫外線によって皮膚病を引き起こしたり、熱中症になることもあります。犬が暑さを和らげたい時は、舌を出して呼吸し、冷たい床に身体をぴったりとつけて伸びています。
仰向けになってお腹を出すことで、体温調節しようとする場合もあります。仰向けになってお腹を見せると甘えたいのかなと犬を撫でる飼い主も多いですが、気温の高い季節や舌を出してハアハアしている時は室温を調整したり、冷感グッズを犬に用意してあげるようにしましょう。また、脱水症状にならないように、こまめに水分を摂らせるようにしましょう。
いたずらを許してほしい
イタズラをした後に、許してねの意味で仰向けになってお腹を見せる犬もいます。自分の急所であるお腹を見せる行動は降参の意味を持つので、イタズラ後に飼い主に怒られることを察してこういったアクションを取るようです。また、飼い主に怒られた後に降参や反省の意味でお腹を見せる犬もいるようです。
しっぽが下がって後ろ足に挟まっていたり、耳が寝ていたり目がしょぼしょぼになっている時も犬が反省している時のアクションです。イタズラをした後にお腹を見せる、しょんぼりしている時は、「ダメ」と短く怒って終わりにしましょう。
反省の態度をとってもなお、飼い主から怒鳴られてしまうと飼い主と犬の信頼関係が揺らいでしまいます。ストレスから唸ったり噛んだりなどの問題行動が出てくることもあるので注意が必要です。ただし、悪いことをした後にお腹や身体を撫でると、犬が褒められていると勘違いしてイタズラを繰り返す原因になるので、イタズラ後は毅然とした態度で接するようにしましょう。
体調不良を訴えている
体調不良が理由で仰向けになってお腹を見せる犬もいます。犬は自分の体調を飼い主に隠すような面がありますが、自分の身体に変化があるといつもと違う行動に出ることがあります。お腹を見せる、しっぽが下がる、丸くなって飼い主から遠い場所に行くなど体調不良時の行動は様々です。
ウキウキした様子で甘えるようにお腹を見せる時と体調が悪くてお腹を見せる時は雰囲気が違うので、愛犬の目に元気がなかったり、食欲不振、嘔吐や下痢、眠る回数が多いなどの症状がないかを飼い主がよく観察するようにしましょう。様子がおかしい場合は、すぐに動物病院に連れて行くといいでしょう。
服従を示している
飼い主や初対面の人や動物に対して仰向けになってお腹を見せる時は、服従心や挨拶の意味が込められている場合もあります。自分の急所であるお腹を見せることで、相手に対して敵意がなく服従するという意思表示をしているのです。飼い主の隣でお腹を見せて寝ている場合は、服従心や信頼からそういったポーズを取っています。
リラックスしている
リラックスしている時にお腹を見せる犬もいます。リラックスしてお腹を見せる時は、背中を床にこすりつけてクネクネしたり、ゴロゴロしたりして気持ちよさそうにしています。リラックスした姿が可愛くてお腹を撫でると、おしっこをしてしまうこともあります。母犬に下腹部を舐めてもらって排泄をしていた子犬の頃の名残が残っていることで、反射的におしっこをするようです。
また、シャンプー後や洋服を着せた後に、痒そうに床に身体を擦り付けてお腹を見せている時は、自分の身体についたニオイを消したい時です。自分のニオイを取り戻してリラックスしたいのです。
犬にとってニオイは大切な情報源で、自分をアピールする術でもあります。ちなみに野良犬と飼い犬では行動に少し違いがあり、野良犬は自分のニオイを外敵に悟られないように木や草を身体に擦り付けてニオイを抑える行動に出るようです。
犬がお腹を見せるためのしつけ
飼い主の前で仰向けになってお腹を見せる犬もいれば、まったくお腹を見せることがない犬もいます。お腹を見せる行為には様々な理由があるので、お腹を見せない犬に服従心がないわけではありません。仰向け自体に抵抗があるのかもしれません。犬がお腹を見せるようにしつけをすることも出来ます。こちらでは、犬がお腹を見せるしつけのメリットや方法についてご紹介していきます。
しつけるメリット
犬が仰向けになってお腹を見せることが出来れば、飼い主への服従心が強くなって扱いやすくなります。「待て」や「お座り」が出来ない、散歩の際に飼い主の前に出るなど飼い主への服従心が見られない場合は、仰向けになってお腹を見せるしつけをしてみましょう。
また、仰向けになってお腹を見せることで普段は目視することが少ないお腹周り、足の付け根、足の側面などを観察して、皮膚炎や腫瘍による膨らみなどの異常を発見しやすくなります。飼い主への服従心を身に付けさせると共に、健康管理のための身体のチェックも出来るので、子犬のうちからお腹を見せるゴロンを覚えさせるようにしましょう。
しつけの際のポイント
普段からお腹を見せることがない犬の場合は、仰向け自体に抵抗があります。仰向けが嫌にならないように、ゆっくり犬がリラックスした状態で行うようにしましょう。まずは側頭部や背中に手を当ててゆっくり仰向けにさせてみましょう。
片方の手で前脚を押さえて仰向けにさせると暴れるのを防ぐことが出来ます。この際「ゴロン」「くるり」「回れ」など犬にとって分かりやすい言葉かけて、今後その言葉で仰向けになれるようにするといいでしょう。仰向けのアクションは子犬の頃に覚えさせるのがベストです。
ただし、注意したいのが子犬は仰向けになる途中で甘噛みをすることが多いということです。甘噛みは子犬にとって甘えるためのアクションなのですが、甘えているからと言って噛むことを良しとすると成犬になってからしつけに苦労するので、甘噛みしたら「ダメ」と注意するようにしましょう。
また、警戒心が強く仰向けにさせようとすると逃げる場合は、後ろからの抱っこに慣れさせて警戒心と解くことから始めるといいでしょう。飼い主との仰向けになれてくると、「ゴロン」という掛け声だけで飼い主にお腹を見せるようになるはずです。
お腹を見せる犬の動画
犬を仰向けにさせてお腹を見せるしつけ方法が分かったところで、次は犬がお腹を見せる動画をご紹介していきます。普段、愛犬がお腹を見せることがない方はどんな風に仰向けになるかをイメージしやすいかもしれません。お腹を見せる可愛い犬の動画に癒されましょう。
お腹を見せるトイプードル
こちらは、お腹を見せるトイプードルの動画です。お腹を見せたままほとんど動かず、まるでぬいぐるみのようで可愛いです。飼い主が声をかけても仰向けのポーズをキープしているので、リラックスして飼い主を信用しているのがよくわかる動画となっています。
リラックスポーズのしつけ方
こちらは、ドッグトレーナーさんによる犬を落ち着かせる仰向け抱っこのしつけ方法を紹介する動画となっています。仰向け抱っこを覚えさせると動物病院や外出時に愛犬を大人しくさせやすいので、犬を飼っている方は覚えさせると便利です。抱き上げる時は前足を持ったり無理に仰向けにしたりしないようにします。
犬に痛みを与えないように仰向けにさせることで、リラックスさせることが出来ます。胴回りと前足を優しく両手でホールドして仰向けにさせることがポイントです。仰向けにした後に暴れた場合は、胴回りをホールドした状態で犬が落ち着くまで少し待ちます。落ち着いたらホールドする力を少し弱めて、脇のあたりから優しく撫でてリラックスさせましょう。
仰向けが怖くないものだと分かれば、暴れなくなります。注意したいのが、暴れた状態のまま態勢を戻さないようにすることです。暴れたら放してくれると分かると仰向けポーズをいつまでも出来ないままになってしまいます。少し落ち着かせてから解放するようにしましょう。
犬のポーズや行動からわかる気持ち
お腹を見せる以外にも犬の気持ちを読み取ることが出来るポーズや行動は沢山あります。犬と人間は言葉を交わすことが出来ませんが、飼い主がポーズや行動から愛犬の気持ちを読み取ることが出来れば、コミュニケーションがスムーズになり、犬との生活がもっと楽しいものになるはずです。
手招きのポーズ
犬が飼い主に向かって前足で手招きをするようなポーズを取ることがあります。これは、飼い主に甘えて構って欲しい時にするポーズです。愛犬が手招きのポーズを取った時は、声をかけたり優しく撫でてあげたりするようにしましょう。また、食事やおやつなどをおねだりする時に手招きのポーズをする犬もいるようです。
お尻を床に擦りつける
犬がお座りの状態でお尻を床や地面にこすりつけることがあります。お尻歩きと呼ばれるこのポーズは、おしりに糞が付いていたり痒かったりする時にすることが多いポーズです。お尻歩きが頻繁な時は病気や寄生虫が付いている可能性もあるので、心配な場合は動物病院で検査してもらいましょう。
首をかしげる
犬が少し首を傾げたポーズを取ることがありますが、これは飼い主の声や周囲の物音などに集中している時にするポーズです。愛犬がキョトンとした顔で首を傾げると可愛いと飼い主が喜ぶので、それを知ってサービス精神でポーズを取る犬もいるようです。
また、首を傾げている時はしつけのチャンスでもあります。飼い主の声に集中しているので、「お座り」「お手」「伏せ」などの命令をしてみましょう。いつもより集中力がアップしているので、しつけが成功しやすいはずです。飼い主の言うことをきちんと聞けた場合は、身体を撫でて沢山褒めてあげましょう。
犬がお腹を見せる心理を理解しよう
犬がお腹を見せる理由や仰向けにさせるしつけの方法をご紹介しました。
犬がお腹を見せる理由は飼い主への信頼や服従心以外にも沢山あります。どんな状況で愛犬がお腹を見せるのかで、その意味を考えてみましょう。犬の気持ちを上手に読み取って、犬とのコミュニケーションやスキンシップをもっと楽しいものにしていきましょう。